(以下は東京科学大学の、海洋研究開発機構との共同プレスリリースです)

 

-生命の起源に迫る新しいリン酸化経路を提示-

 

 

尿素とリン酸からの高エネルギーリン酸生成の模式図
尿素、リン酸、亜硝酸イオンを含む中性付近の水溶液に硫化銅を加え、酸素を含まない雰囲気下、常温で撹拌操作を行った。その結果、硫化銅存在下でのみ高エネルギーリン酸を検出した。また、核酸前駆体であるヌクレオシドを添加した条件では、そのリン酸化反応が促されることも確認した。すなわち、常温の水中での核酸(RNA)の材料が生成することを示した。

 

東京科学大学(Science Tokyo) 物質理工学院 応用化学系の富澤錦大学院生(博士後期課程3年)、未来社会創成研究院 地球生命研究所(ELSI)の中村龍平教授(兼 理化学研究所 環境資源科学研究センター チームディレクター)らの研究チームは、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の北台紀夫主任研究員、田川翔大朗ポストドクトラル研究員との共同研究で、常温・中性付近の穏やかな水溶液中でも尿素を活性化させれば、高エネルギーリン酸の生成と核酸前駆体のリン酸化反応が進むことを見出しました。

 

尿素は多くの生体分子の合成に重要であるリン酸化反応を進めるため、生命の起源における化学進化を推し進めた重要な化学種です。従来、リン酸化反応には加熱による尿素の活性化が不可欠でしたが、加熱は同時に熱に不安定な生体分子を壊すため、生成可能な生体分子の範囲は限られていました。そこで、本研究では加熱をしない常温の水溶液条件で尿素を活性化できないかと考え、硫化銅鉱物(コベライト)が尿素存在下でリン酸化反応を促すかを調べました。その結果、常温・中性付近の水溶液中で、硫化銅により尿素が活性化されて高エネルギーリン酸であるカルバモイルリン酸が生成し、アミノ酸から核酸塩基前駆体も生成することが分かりました。さらに核酸の前駆体であるウリジンのリン酸化反応も促されることが確認されました。

 

この成果は、温和な水環境における高エネルギーリン酸生成の可能性を示すとともにリン酸化反応の新たな経路を提示しました。今後、化学進化過程におけるATP(アデノシン三リン酸)や遺伝分子RNAの生成経路の理解につながることが期待されます。

 

本成果は、3月23日付(英国時間)で「Chemical Communications」誌に掲載されました。

 

プレスリリースの全文は、東京科学大学のこちらのページをご覧ください。