ELSIは、生命や惑星系の起源と進化を探求する、活気あふれる国際的研究拠点です。しかし、科学的成果が広く認められていても、研究の背景にある個人の物語や動機、チームのダイナミクスはあまり表に出ることはありません。「ELSI Voices」は、こうした状況を変えることを目的としたストーリーテリング・イニシアチブです。インタビューや人物紹介記事を通じて、一般の方にも親しみやすく、学生にとっては刺激となり、共同研究者にとっては有益な形で、ELSIの教授たちを紹介していきます。これらの記事では、科学的な成果だけでなく、ELSIをユニークなものにしている文化、哲学、そして人々にも焦点を当てていきます。

1. マックグリン教授は、微生物システムにおいてエネルギーがどのように流れるかを、特に熱水噴出孔のような過酷な環境に着目し研究なさっています。この研究についてのアイデアを具体的に示す最近のプロジェクトを一つ挙げ、それがなぜ重要なのかを説明してください。
私たちは、生物が環境からどのようにエネルギーを得ているかを研究しています。私はよく、生物を「燃料を必要とする機械」だと考えます。植物、動物、菌類、細菌、古細菌は、多くの構成要素を共有していますが、生存や成長のために驚くほど異なるエネルギー源を利用することができます。こうした多様な戦略を理解することは、地球上の生命の限界と、宇宙の他の場所での生命の可能性の両方を探求する助けとなります。
これを解明するために、私たちは熱水系や温泉などの環境を研究しています。アイスランドでは、世界で唯一スキューバダイビングで潜ることができる熱水チムニーを調査しました。そこでは、微生物が地熱エネルギーと太陽光の両方にアクセスすることができます。日本では、初期の地球の環境に似ている可能性のある、鉄分を豊富に含む温泉を調査しました。その結果、ごく少量の水素ガスでさえ微生物群集に大きな影響を与えることが判明し、地球上の最古の生命のエネルギー源や、他の惑星での生命を支える可能性のあるものについての手がかりが得られました。

2. マックグリン研究室では、化学、微生物学、フィールドワークをつないで研究がおこなわれています。ELSIの内外で、実験、自然環境からのサンプリング、そして学際的な共同研究をどのように組み合わせていますか?
研究の核心にあるのは、「エネルギーの流れは、どのようにして秩序を生み出し、維持しているのか」という単純な問いです。生物を観るとき、私はエネルギーを秩序、成長、そして進化へと絶えず変換し続けるシステムを見ています。そのプロセスを理解するには、化学や微生物学から地質学、物理学に至るまで、さまざまな視点から生命を研究する必要があります。
そのため共同研究は不可欠です。科学上の大きな疑問の中には、範囲が広すぎて一人だけでは答えを出せないものもあります。これまでのキャリアを通じて、私は幸運にも非常に多様な背景を持つ研究者たちから学ぶ機会を得てきました。その経験により、私があらゆる分野の専門家になったわけではありませんが、異なる学問分野をつなぐ問いを立てる方法を学びました。ELSIやJAMSTEC(訳注:国立研究開発法人海洋研究開発機構)の研究仲間、あるいは国際的なパートナーと協力する際にも、異なる専門知識を持つ人々が集まり共通の課題に取り組むとき、最も刺激的な発見が生まれると実感しています。

3. 日本の温泉は、初期地球の環境に似ていると考えられています。温泉における微生物群集を研究するマックグリン教授の取り組みは、地球の初期の生物圏を理解する上でどのように役立つのでしょうか?
生命が最初に誕生した地球は、私たちが暮らしているのと同じ惑星ですが、化学的には大きく異なります。生命がどのように始まったかを理解するには、太古の環境に似た場所を研究する必要があります。幸い、地球上には今も特異な化学的性質が残っている場所があり、過去を垣間見る貴重な窓となっています。
日本の温泉は、活発な地質活動によって、現代のほとんどの生態系には見られないような環境が形成されているため、特に研究に役立ちます。地下深くでは、水が岩石と反応し、初期の地球で一般的だったと思われる化学物質を豊富に含んだ水となります。この水が地表に湧き出ると、ユニークな微生物群集が生息する環境が形成されます。こうした環境は、厳密な意味での「タイムマシン」ではありませんが、現時点で利用できる中で最もそれに近いものと言えるでしょう。そこに繁栄する生物を研究することで、数十億年前、生命がどのように機能していたかについて新たな知見を得ることができます。

4. 安定同位体は、古代の生化学的プロセスを追跡するための手段の一つです。硫黄同位体の分画や酵素のエネルギー学に関する研究は、生命の起源についてどのような知見をもたらしますか?
生命とは一つのプロセスであり、そのプロセスは代謝、つまり成長と生存を支える化学反応のネットワークによって駆動されています。多くの元素は、同位体と呼ばれるわずかに異なる形態で存在します。これらの同位体は化学反応においてほぼ同じ挙動を示しますが、測定可能な微細な痕跡を残します。
私は、同位体が生物学的プロセスに関する隠された情報を運んでいると考えたいと思います。地球上の生命に関する最古の証拠は、多くの場合古代の岩石に保存された同位体パターンから得られます。40億年以上前に生命が存在していたことはわかっていますが、それらの初期生命体や、彼らがどのように生きていたかはほとんど知られていません。現代の微生物がどのように同位体シグネチャを生み出しているかを理解することで、古代の記録をより正確に解釈できるようになることを願っています。最終的には、初期の生命がどのような活動を行い、何を摂取し、どのような環境に生息していたのかを再構築する一助となるかもしれません。

5. 研究室に入りたい学生に、研究活動についての知ってほしいことは何ですか?フィールドワーク、実験、理論のバランスをどのように取りながら、刺激的な環境を作り出していますか?
私は研究を共同的なプロセスだと考えています。学生一人ひとりが異なる関心、強み、志を持っているので、多くの時間を割いて学生の話に耳を傾け、アイデアを議論し、学生が心からワクワクするような研究課題を見つける手助けをしています。私は学生と教授の関係を厳格な上下関係とは捉えていません。むしろ、好奇心と発見を軸に築かれたパートナーシップだと考えています。
私たちの研究は、フィールド調査、実験室での実験、理論を組み合わせています。ある月は温泉や熱水系からサンプルを採取し、次の月にはデータ分析や実験設計、あるいは生命の起源について議論したりします。私の役割は指導を行うことですが、学生たちから毎日多くを学んでいます。私は今でも自分を「学生」だと考えています。私たちの研究室が、好奇心を育み、全員が共に新しいアイデアを探求できるよう後押しする場となるよう願っています。

【ショウン・マックグリン プロフィール】
2010年にモンタナ州立大学で化学および生化学の博士号を取得後、カリフォルニア工科大学でポスドク研究員として地球生物学および地球と生命の相互作用を研究。その後、日本と米国で研究職を歴任し、現在は地球生命研究所(ELSI)准教授。
ELSIでは、生命の起源や、熱水噴出孔や温泉などの環境で微生物がいかにエネルギーを獲得・利用しているかを研究するグループを率いている。チームは、微生物学、地球化学、フィールドワーク、および実験室での実験を組み合わせ、極限環境で生命を維持し、地球の初期生態系を支えていた可能性のある代謝プロセスを研究。エネルギーが生命システムをどのように形作るかを研究することで、地球における生命の起源と進化を、宇宙の他の場所における生命探査という、より幅広い取り組みへと結びつけている。
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DOI: https://doi.org/10.5281/zenodo.22760783
ショウン・マックグリン教授のホームページ: https://sites.google.com/elsi.jp/mcglynn/