(以下は理化学研究所との共同プレスリリースです)
-複数栄養源の量が変化しても適用可能な代謝理論を構築-
東京科学大学(Science Tokyo)未来社会創成研究院地球生命研究所(ELSI)の畠山哲央特任准教授と理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター多階層生命動態研究チームの山岸純平基礎科学特別研究員の共同研究チームは、細胞増殖についてこれまで経験的に知られていた古典的法則の背後にある統一原理を解明しました。これは細胞の増殖・成長が代謝におけるさまざまな資源のやりくりによって制約されるという原理で、一般法則として「大域的制約原理」と名付けました。
本研究成果は、生命科学における基礎理論として細胞増殖のメカニズムへのより深い理解をもたらすだけでなく、発酵産業やバイオ燃料生産といったバイオテクノロジー分野への応用が期待されます。
微生物やがん細胞の増殖速度が栄養源の量にどう依存するかは、生命科学における重要な問題です。モノーの式やリービッヒの最小律といった法則がそれぞれ約80年前と約180年前から経験的に知られてきた一方、多様で複雑な細胞の代謝系からそれらの単純な経験則が現れるメカニズムは長らく謎であり、その普遍性や拡張性には限界がありました。
今回、共同研究チームは、これらの古典的増殖則を再検討し、細胞内代謝における資源分配の帰結として統一的に説明できることを数学的に証明しました。古典的法則を統一する大域的制約原理を解明することで、従来は扱えなかった複数の栄養源の量が変化した際の増殖速度の変化も予測可能になりました。
本研究は、科学雑誌『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS) 』オンライン版(10月3日付)に掲載されました。
プレスリリースの全文は、理化学研究所公式サイトのこちらのページをご覧ください。