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2022年1月30日(日)に、地球生命研究所(ELSI)と東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、東京大学 ニューロインテリジェンス国際研究機構(IRCN)による第7回合同一般講演会「起源への問い」が開催されました。

宇川彰 WPIプログラム・ディレクターによる 開会の辞のあと、宇宙化学・地球化学 伊佐 純子(ELSI研究員)、渡部 喬光(IRCN 主任研究者・准教授)、宇宙物理学 日影 千秋(Kavli IPMU 特任准教授))の3人の研究者が講演を行いました。
     その後、オーストラリア国立大学の丸山 善宏 シニアレクチャラーをモデレータとして座談会が行われました。
     
ELSIの伊佐研究員は「地球外物質からわかる地球物質のものがたり」というタイトルで講演を行いました。以下では、講演中に寄せられた質問について可能な限り伊佐研究員から回答をいただき、Q&Aにまとめました。                              

たくさんのご質問、誠にありがとうございました。     

なお質問文についてはわかりやすさの観点から一部編集を加えている場合があることをご了承ください。

質問の多くは講演中・講演後に寄せられたものであるため、講演動画をご視聴のうえでQ&A をご覧いただくことをお勧めいたします。

伊佐純子研究員:「地球外物質からわかる地球物質のものがたり」はこちら

Q1 もし地球外知的生命体を見つけたら、どのようなことを調べてみたいですか?調べてみて起原への理解はどの位進むと思われますか?

A1 その地球外知的生命体のコミュニケーション手法を調べ、「起源を問う」とは彼らにとってどのような意味を持つのか聞いてみたいと思います。我々の起源に対する理解が進むかもしれません。

Q2 炭素を使わない生命体はありえますか?

A2 炭素を使わない生命体が絶対にありえないと言い切ることはできません。

Q3 生命の研究は、地球外で生命が見つかった時点が本当の始まりではないかと思いますが、先生はいかがお考えですか?

A3 「本当の」の意味するところはわかりませんが、いつか地球外生命が見つかったら我々が学ぶことは多いでしょう。

Q4 ウイルスが生命であるかないかについての考え方は研究者によって異なると思いますが、ウイルスはどのように発生したとお考えですか?細菌、アーキア、真核生物は共通祖先という3ドメイン説や、最近では2ドメイン説があると思いますが、ウイルスには、それらとは全く別の祖先がいるとお考えですか?

A4 ウイルスもアーキアも細菌も私の専門からはかなり遠いため、私の知識ではどの説が有力であるのか根拠を添えてお答えできません。とはいえ、この分野でも可能な範囲で観察や実験を行い仮説を検証立案しているので、新たな発見によってこれまでの仮説を覆すことはいくらでもありえると思います。全く別の祖先であることを決定づける証拠が今後現れるかもしれませんね。

Q5 隕石が落ちてくる時の熱で化学反応が起こり、有機物の多様性が生まれることはありえますか?

A5 隕石の外側は加熱されるのですが、その内側全てが加熱されているわけではありません。隕石有機物を分析するときは、地球外の出来事を理解したいので、地球の影響を避けるために地球大気で加熱されなかった部分を選びます。ですから、そのような加熱された部分を集中的に調べたことがないのでお答えできません。

Q6 コンドライトはどのような組成でできているのでしょうか?例えば水素、酸素、炭素はどれぐらい含まれているでしょうか?また、窒素は含まれているでしょうか? 

A6 コンドライトにはそれらの元素全てが含まれています。元素周期表の安定な元素は全て含まれていますし、半減期の長い放射性同位体や、落ちてきたばかりの隕石には宇宙線照射によって生成された比較的半減期の短い放射性同位体も含まれています。含有量はコンドライトの種類によって異なります。

Q7 隕石は宇宙のどこかの星のかけらなのでしょうか?コンドライトを薄く切って構造を観察するとき、そのコンドライトが、宇宙のどこかの星自体の構造を代表するサンプルかどうかについて、研究ではどのように考慮されているのでしょうか?

A7 隕石は太陽系の小惑星や惑星のかけらです。それぞれ小惑星や惑星ごとに化学組成の特徴が違うので、火星のように分析装置を送り込むか、月や、小惑星リュウグウのようにサンプルを直接持って帰ってくると隕石と惑星物質の直接比較ができます。そのような化学組成の比較から、どの隕石がどの惑星を代表するサンプルであるか判断することができます。

Q8 隕石が南極に多いのはなぜですか?

A8 隕石がサハラ砂漠や南極に落ちやすいというわけではありません。氷の砂漠も砂の砂漠も隕石が発見されやすい環境であるため、多くの隕石がみつかります。

Q9 生命とはどこからが生命と呼ばれるのですか?

A9 NASAはこれからのミッションや未来の大発見のために「生命とは」というある程度の方針を出していますが、人類全員が納得できるような生命の定義はあ     りません。歯切れの悪い答えですが、特に生命の起源を研究している科学者であるからこそ、その境界を決めることに慎重になりがちです。

Q10 どの程度始原的であるかの度合いは、どのように判断するのですか?

A10 隕石中の鉱物組成やその組織を観察することで判断します。

Q11 有機物から生命が生まれるためには、どのような条件が必要ですか?

A11 それをまさに研究しています。

Q12 有機物の多様性よりも、集積度(密度)や、環境(温度、PH、隔壁)などの要素が生命の誕生に寄与したのではないかと思いますが、そのあたりの要因はどう分析されていますか?

A12 それらは私も重要な要因だと思います。

Q13 宇宙に多く存在する一酸化炭素に、宇宙線や紫外線などがエネルギーを与えて化学反応を起こすことによって多様な有機物が作られると思いますが、多様な有機物が生成される宇宙内での機構はどのように理解すればよいですか?

A13 どのような化学反応機構か現在詳しく解明中です。

Q14 始原的コンドライトに見られる有機物の多様化は、コンドライト中の化学反応で実現したのでしょうか?それとも、分子雲→原始太陽系円盤→塵の集積 のどこかのタイミングの気相反応などで生成したのでしょうか?

A14 今まさに科学者の間で多くの議論が交わされているところです。

Q15 生命の有機物では分子構造のキラリティーが重要な意味を持っているのですが、隕石内の有機物では既にキラリティーを持っている物質があるのでしょうか?

A15 あります。

Q16 有機物の多様性が減っていったのは、今のところ何が原因と考えられていますか?有機物が多様な状態というのは、少ない状態に比べてエネルギー的に不安定なのでしょうか?

A16 物質はエネルギーの高い状態から低い状態になる性質があります。

Q17 有機物と無機物の違い、また、有機物の中でも無生物由来と生物由来のものの違いは何でしょうか?無機物の中にも生物由来のものもあるのでしょうか?有機物/無機物が先なのでしょうか、あるいは生物/無生物が先なのでしょうか?

A17 有機物は一般的に炭素を含む化合物で、無機物はそれ以外の化合物です。有機物も無機物も生物の寄与がなくとも合成できます。生物由来の身近な無機物の例を挙げると、お風呂の足ふきマットとして有名になった珪藻土です。これは生物の珪藻が合成した無機物珪酸 (SiO) をたくさん含んでいます。宇宙のビッグバンを全ての時間の始まりとして、有機化合物の起源を考えると生物/無生物どちらが先かといえば無生物が先であると言えるでしょう。しかし、もう少し短い期間で考えるとどちらが先であると言い切れないかもしれません。例えば、太陽程度の恒星も死んだあとは一部リサイクルされます。そして新たな恒星の一部になり、そこでまた生命が誕生するかもしれません。そのような物質循環の中では、どこを起点とするかで何が先か後か言い切れないかもしれません。

Q18 落ちている石が隕石かどうかはなぜわかるのですか?見るだけで分かるものなのでしょうか?

A18 ほとんどの隕石は特徴的な外見をしています。大気圏を通るときに隕石の一部が溶けると、フュージョンクラストと呼ばれるガラスのコーティングになります。そのおかげで、隕石の色は一般的に非常に黒く、かつ(落ちて間もない隕石は)テカテカし、かつなめらかな形の石になります。黒い火山の溶岩や、形が丸い河原の石など、からは見た目からして異なります。